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「ぴあさぽ」という社内プロジェクトを有志で立ち上げ、社員の支援に携わっていらっしゃるLINEヤフー株式会社の後藤様をご紹介いたします。対話することを大切にされて、相談される方だけではなくキャリアコンサルタントの在り方にも着目し2on1面談を導入されています。キャリアコンサルタントとしての活動は「まずは本業をちゃんとやること、その上での支援です」と凛と話をしてくださいました。企業での支援の意味や意義とは何かということを考える機会をいただいたインタビューでした。
―――後藤さんのこれまでのご経歴と現在のお仕事について教えていただけますか。
ヤフー株式会社に入社する前は、地域のコミュニティ放送局に勤めました。中央区を中心としたFMラジオ局です。その後2000年の4月に当時のヤフー株式会社に入社しました。そのころは本当にまだ小さな会社で人数もそれほど多くはありませんでした。最初は企画職としてYahoo! Inc.の各種サービスをローカライズするような仕事をしていました。その後ラーメン特集やペット特集といった日本向けの特集企画を担当し、それから商品企画、インターナルコミュニケーションいわゆる社内広報の業務などに携わりました。そして2018年から2年間勉学休職の制度を利用してアメリカに滞在し現地で学びました。2020年に帰国して復職した後、今の人材開発部に異動して4年目になります。現在はLINEヤフーおよびグループ会社の社員を対象とした企業内大学であり、リーダーの育成を担うとともに、LINEヤフーグループ社員が学び合い、教え合う、学びのコミュニティとして設立、運営されているLINEヤフーアカデミアの業務を担当。研修プログラムを社員に向けて提供。企画・運営しています。
―――経歴をお聞きして放送局からヤフーというと思い切った転職のように思えたのですが。
そうですね。当時ちょうどインターネットという言葉が使われだしていて、私自身全く未知の世界ではあったのですが、ヤフーのページの「スタッフ募集」というテキストが目に留まりました。なんとなく働いたら楽しそうだな、ワクワクするなと思って応募しました。
―――なるほど。ヤフーの沿革を拝見すると1996年設立とあるので、後藤さんはほぼ草創期からのメンバーでいらっしゃるということですね。現在は人材開発部でご活躍とのことですが、それとは別に有志の方たちで従業員に対して対話の機会を創出する「ぴあさぽ」という支援活動にも力を注いでいらっしゃるそうですね。その「ぴあさぽ」について教えていただけますか。
今お話しいただいたように「ぴあさぽ」はLINEヤフーの有志で活動する社内プロジェクトです。メンバーは産業カウンセラーやキャリアコンサルタントの有資格者です。希望する社員に対して、キャリアや人間関係、プライベートなことも含めて対話を通じて応援支援する仕組みです。毎月枠を設けており、今は事務局1名を含めて18名の体制で活動しています。
―――「ぴあさぽ」を立ち上げた経緯についてお伺いできますか。
2021年に資格を取得し、何らかの形でこのスキルを生かして、会社に貢献できないかと考えたのが「ぴあさぽ」を立ち上げたそもそものきっかけです。初めはインターナルコミュニケーションのチームの中で、個人活動としてチームの方にトライアルのような形でお話をきかせていただいていました。そんな中、同僚二人にこの活動を社内に広げていきたいと思っていることを話したら二人とも賛同してくれたので、人事部門に有志のプロジェクト活動としての立ち上げを提案してみたところ、我々の活動をバックアップしてくれることになり、その後、全社的なトライアルを経て「ぴあさぽ」として正式にスタートしました。私たち立ち上げメンバーの3人は昔から付き合いがあり、産業カウンセリングやキャリアコンサルティングの勉強を通して対話やサポートというところに深い思いがありました。実際に「ぴあさぽ」として活動するためには、事前に産業医からの研修も受け、コンプライアンス、傾聴に関しても改めて学習をしています。これらの学習については現在も「ぴあさぽ」に新たなメンバーとして加わる際、同じ研修を受けていただいています。
―――「ぴあさぽ」の立ち上げの背景には、何か社員同士の対話などに対するニーズが会社としてもあったということでしょうか。
そうですね。「ぴあさぽ」を立ち上げた当時はコロナ禍の真っ只中でした。この状況は立ち上げに大きく影響したと思います。オンラインでのコミュニケーションやリモートワークを基本とした働き方に移行していた時期だったので、リアルな場での「元気?」といった社員同士の何気ないやりとりが大幅に減少していました。Zoomを利用してミーティングを行うことはありましたが、リアルなコミュニケーションの場でなされていた、何気ない会話や対話の機会の減少が課題感としてあって、有志のプロジェクトで何かこの課題に対して、私たちにできることはないだろうか、という気持ちはありました。
―――立ち上げに際してはどのようなことを意識されたのでしょうか。
まず、私たちはフラットな立場の同僚として接することを大切にしました。もちろん、産業カウンセラーやキャリアコンサルタントの資格を持つ者として、守秘義務等の規則は遵守しています。当初はオープンダイアローグと2on1という2つの形で行っていました。今は2on1をメインとしています。2on1というのは、ぴあさぽ側が2人に対して利用者が1人です。なぜ1on1ではなく2on1にしたかというと、これは活動を開始する前に産業医の先生からいただいたアドバイスによるものです。ぴあさぽ側も利用者側も同じ会社の社員であり、対等な立場で話を聴くこととなるため、1on1では話を聴く側の心理的負担が大きくなる可能性があると懸念されました。実際、守秘義務がある中、フラットな関係を保ちながら重い話を聴く場合、一人で受け止めるよりも2人で受け止めた方が心理的負担が軽減できると思いました。また、ぴあさぽが2人いることによって視点も多角的になり、利用者側にもメリットがあるのではないかと思ったのです。
―――なるほど。多様な視点をもつということですね。利用者側からすると「この人はこう言ったけど、こちらの人はまた違う意見なんだな」というふうに受け取れるということですね。
おっしゃる通りですね。多様な視点でものごとを考えることができるのは利用者にとってもいいことだと思います。
―――2人の聴き手のうちどちらかがメインとなるなどあるのでしょうか。2人が違う視点で話すと方向性が定まらなくなる可能性もありますよね。
ご懸念の通り2人で利用者の話を聴く際には、あらかじめメインの聴き役を決めてから対話に臨みます。利用者の方にも「今日は2人のぴあさぽがいますが、私がメインでお話を伺いますね。途中で、もう一人のぴあさぽにも意見を聞いてみましょうね」というふうに、対話の間に少しリフレクティングを入れるようにしています。そして、リフレクティングの際にはもう一人のぴあさぽに「これまでの話を聞いて、●●さん(ぴあさぽ)はどう思いますか?」と意見を求め、その後再びメインに戻して対話を続けます。そして、これで終わりではなく、利用者の方が退出された後、私たち2人で「こんなお話をしてくださったね」と振り返りを行うという形を取っています。
―――2on1ではメインとサブを決め、対話の終了後も振り返りを行っているんですね。そうすると、いわゆるスーパーバイズのようなこともされているんですか。
スーパーバイズと言えるかはわかりませんが、私たちも研鑽を積みたいので、振り返りのときはメインの人がサブの人に「アドバイスが多めだったかな」「傾聴の姿勢として大丈夫だったかな」など、自身の関わり方について聞くこともあります。ぴあさぽ同士で意見を求め合って「確かにそうだね」と反省したり納得したり。お互いに思ったことを率直に伝え合うことで研鑽を積むことができるのではと思っています。
―――お互いでアドバイスをし合いながら研鑽を積んでスキルを高めているということですね。ところで、当初はオープンダイアローグと2on1と2通りの形でスタートさせたのが、今はオープンダイアローグは休止中であるとのことでした。こちらの経緯について教えていただけますか。
オープンダイアローグは、ぴあさぽメンバー2人と複数名の利用者という構成で実施します。例えば、利用者としてAさん、Bさん、Cさんがいる場合、まずAさんのお話を聞いてその場にいる全員で、リフレクティングを行います。BさんもCさんもAさんのお話についてコメントをします。この取り組みは非常に良いものだと考えています。現在は、2on1がメインですが、タイミングを見てまた行いたいと思っています。
―――オープンダイアローグは形としてはきっとグループカウンセリングになるんですね。それはそれでまた違った効果がありそうですね。「ぴあさぽ」のメンバーの方たちは有志と伺いましたが、みなさん本業は別にあるということですね。
はい。メンバー全員がLINEヤフーで本来の業務をもっています。有志のプロジェクトとして活動しているため、最優先すべきはもちろん本業です。あくまで本業に支障がない範囲でぴあさぽの活動をしています。
―――「ひあさぽ」の活動について、メンバーの皆さんのモチベーションはどのあたりからくると思われますか。
モチベーションは人それぞれで異なると思いますが、私の場合、この会社が大好きなので自身の強みやスキルを生かして会社に貢献できることが嬉しい、というのがモチベーションの根本にあります。また、せっかく取得した資格なので、積極的に活用したいとも考えました。自身の技能を維持・向上するためにもぴあさぽ活動を通じて社員の方々の話を聴き、そして、社員の方も気持ちを整理したり、前向きな気持ちになったりすることができるのであれば、双方にとって良いのではないかと思っています。上長との1on1面談とは別に、2on1でのフラットな対話をプラスすることで、さらに社員の気持ちの整理を促進し、業務に対する意欲を前向きにできると考えています。面談に来られる社員の中には「なんとなく申し込んでみたのですが…」と話し始める方もいますが、お話を進めていくうちに「ちょっとモヤモヤしていたのがスッキリしました」とか「新たな気づきがありました」と言って、明るい表情でクロージングを迎えることも多くあります。そんな様子を目にすると「ぴあさぽ」をやっていてよかったと感じます。
―――「ぴあさぽ」に来られた社員の方の言葉が後藤さんのモチベーションの向上につながり、社員にとっても1on1に2on1をプラスさせることで仕事に対する前向きな気持ちを促進させることができるというわけですね。
そうです。「ぴあさぽ」によって社員のキャリアに対する理解が深まり「会社にこういう取組みがあってよかった」「気持ちが楽になった」と言ってもらえるととても嬉しいです。私たちは、利用者の上長ではなくフラットな関係性を維持した状態で対話を行うため、より自由に話せて自身の気持ちと向き合いやすくなる一面もあるかと思います。また、同じ会社の社員が話を聴く意味の一つとして、ある程度会社の制度やカルチャーなど、双方に通じる共通言語や文化が存在するので、話の理解が早いように思います。多くの言葉を重ねなくても対話を深めることができると感じています。会社の評価のタイミングやフィードバックの時期など、社内の空気感は言葉に出さなくても双方で分かり合えるように思います。
―――双方に通じる共通言語や文化によって、より理解が容易くなり対話を深めることができるということですね。ところで「ひあさぽ」の申込みについては、どのように周知しているのでしょうか。
社内に告知ポータルがあり、日時とぴあさぽの担当者名を掲載しています。月によって替わりますが、ひと月に12~13枠ほど申込枠を設けており、面談を担当するメンバーは、2人でペアになって1回30分の面談を月に一人1~2枠を担当しています。
―――申し込み状況はどのような感じですか。
当初からほぼ9〜10割、予約枠は埋まっている状態です。「ぴあさぽ」のメンバー内でも、やはりニーズがあるんだねと話しています。「ぴあさぽ」は2021年の10月にトライアルとして始まり、同じ年の12月に有志ボランティアの制度として本格的にスタートしたのですが、メンバーの人数も少しずつ増えてきて、それに伴い提供枠も増えています。コンスタントに利用して頂けていることをとても嬉しく思っています。
―――それはすごいですね。一般にキャリアコンサルティング制度を導入している企業などのアンケートを見ると、制度を導入しても「相談件数が少ない」という回答割合が多いように思いますが、御社ではほぼ毎回予約枠が埋まるのですね。何かPRなど工夫されているんですか。
「ぴあさぽ」を利用した社員のアンケートで、「また是非受けたい」「他の人にも勧めたい」という回答が多い印象であることから、多くの予約につながっているのかと思います。また、上長や産業医からの紹介で予約する社員もおり、さまざまな形で広がりをみせていると思います。上長の場合、メンバーに勧める前に自分で受けてみるというパターンもあるようです。
―――「ぴあさぽ」の活動は着実にその根を張って育っているのですね。後藤さんが有志の活動として携わっていらっしゃる「ぴあさぽ」活動ですが、現在本業として担当されているLINEヤフーアカデミアの業務と「ぴあさぽ」制度、こちらは相互に影響し合っていると感じられることはありますか。
私は「ぴあさぽ」で活動していることが本業にすごく生きていると思っています。本業のLINEヤフーアカデミアの業務では講座の企画などを担当していますが、「ぴあさぽ」で伺えたお話がヒントになることはよくあります。例えばコロナ禍のころ中途入社した方から「孤独感がある」といったようなお話を聞いたときは、同じころに入社した方たちは少なからず同様の気持ちを感じているだろうと、入社時期の近い社員でコミュニケーションが取れるような講座を企画するなどアイデアの幅も広がりました。
―――後藤さんが携わっていらっしゃるLINEヤフーアカデミアはグループ会社全体に対しての業務とのことですが、「ぴあさぽ」はLINEヤフーの活動ですか、それともグループ会社全体に対する活動ですか。
「ぴあさぽ」はグループ会社全体ではなくLINEヤフーの中の活動になります。2023年10月にヤフーとLINEが合併してLINEヤフーになったわけですが、旧LINEにもキャリアコンサルタントや産業カウンセラーの資格を持っている方はいらっしゃって、現在は旧LINEの方も一緒に「ぴあさぽ」の活動をしています。また、ほかのグループ会社のキャリアコンサルタントや産業カウンセラーの方たちとの交流もあり、時々情報交換する機会も持っています。
―――グループ企業の方々ともコミュニケーションをされているということですね。御社の「ぴあさぽ」の活動は2022年に厚生労働省のグッドキャリア企業アワードにおいてイノベーション賞を受賞されていますが、外部からの問い合わせはありますか。
はい、あります。グッドキャリア企業アワードは、合併前のヤフー株式会社の頃に受賞しましたが、これから同賞への応募を考えている企業などから問い合わせをいただくことがあります。
―――やはり「ぴあさぽ」活動に興味を持たれる企業は多いのですね。ところで後藤さんがキャリアコンサルタントを目指されたきっかけを教えていただけますか。
私は当時のヤフーで比較的早い時期に育児休暇を取得し、子育てを経験しました。その際、有志の仲間とともにパパママプロジェクトを立ち上げ、さまざま方と交流をする機会がありました。ですが、自分の経験でしか話せていないことが少し気になっていました。これでいいのかなと思っていたところ、偶然キャリアコンサルタントという資格を知りました。調べてみると、キャリアや心理学、さらには労働に関する法律なども学べる国家資格であることがわかり、非常に興味を持ち講座に申し込みました。知識を身につけることで自身の経験に加えてより幅広い視点から話ができるようになりたいという気持ちがあったのだと思います。
―――実際に学んでみていかがでしたか。
講座は通学もあったので、何よりも同じ資格を取ろうと学びを深める仲間がいたのがよかったです。すごく励みになりましたし、今でもお付き合いが続いている方がたくさんいます。勉強のほうも聞きなれない理論や法律などの学習を通して、やはり、学びって面白いなと思いました。講師の方とは今もお付き合いをさせていただいています。その方はとても魅力的な方でキャリアコンサルティングに向き合う姿勢は、学びが非常に多くあります。学びの中で本当に素晴しい出会いがたくさんありました。
―――キャリアコンサルティングの学習をされて資格を取得し、実践によりさらに経験を重ねていらっしゃるわけですね。ではキャリアコンサルタントの資格をこれから目指す方に何かメッセージがあればお願いできますか。
学ぶことには苦しさもありますが、振り返ると視野が広がり私にとって、とても楽しい時間でした。この資格は幅広く活用できると思います。私は子どもが2人いますが、時々「ここはキャリアコンサルティングのマインドで聴いてみようか」と傾聴を意識して子どもたちの話に耳を傾けることもあります。さまざまな場面で役立ちますが、何よりも自分自身にとって大きな助けとなります。
また、キャリアコンサルティングの学習を通じて、素晴らしい出会いもたくさん経験できると思います。個人的なことですが、私の住んでいる地域の方から「傾聴」に関する講座のお話があり地域の方と触れ合う機会もいただけました。「聴く」と「話す」を分けることをミニ講座でお話ししたところ、皆さんに新鮮に受け止められました。「おしゃべりとは違うんですよ。まずは『聴く』ことにフォーカスしてみてください」とお伝えしました。このように地域のコミュニケーションの一助となることができ、キャリアコンサルティングの学びが生きていると感じました。キャリアコンサルティングを通して会社や地域に少しでも貢献ができることは大きな喜びです。
―――キャリアコンサルティングの学習を通して、後藤さんの活動は会社の中から地域へと広がったんですね。最後に今後こんなことをやってみたいということがあれば教えていただけますか。
私は誰かと会話をすることに喜びを感じています。2018年からアメリカに2年間滞在しましたが、アメリカには本当にさまざまな国籍の方がいらっしゃって、いろいろな方とお話をする機会に恵まれました。対話って世界共通だなと思っていて、キャリアコンサルティングで学んだ知見も生かして世界中の方と話してみたいという思いがあります。まだまだ勉強中ですが、英語ももっと上達すれば「聴く」と「話す」を分ける形で話を「聴ける」ようになるかなと思っています。国を問わずいろんな方と話せると楽しいだろうなとわくわくしています。
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